五 十 六
雲が湧いて雲が流れてそして何処(いずこ)ともなく雲は消えていく
あの出来事も時代が流れて何時しか皆の記憶から忘れられていく
行く末は分かっていた
如何することも出来ないことも
彼がハーバードに留学したのは
勉学のためだけではなく敵国を知ることだった
その資源 経済力 大量生産 軍事力に圧倒される
彼には秀でた才能があった
それは博才である
カジノでのルーレット・ダイス・カード等負けることはなかった
プロの博徒になろうと思ったぐらいである
そして先々を読む将棋が好きで強かった
陸軍と海軍 公人と私人 組織と個の狭間に
思い悩み揺れ動いていた
真珠湾攻撃を企てた運命を背負った男である
長期戦になれば東京を初めとして
全国津々浦々が火の海になると予測していた
五十六は写真で見る限り堀とともにいい顔をしている
山 一歩