第36回

 地図から消えた駅裏
じめじめした梅雨時に
仕事を終えて駅裏のバー里に行く
路地はクランクになっていて途中に居酒屋、ホルモン屋がある
しとしとと雨が降る中傘も差さずに里に駆け込む
カウンター席が5つボックス席が2つの小さな店である
入口にジュウクボックスが置いてある
百円を入れて決まって3曲 私祈ってます すきま風 雪が降るを聴く
カウンターの右端に席を取りビール あたりめ ピーナツをたのむ
ママと他愛もない会話をして興が乗ると水割りを1,2杯おかわりする
ほろ酔い気分で店を後にしてガアード下の屋台でラーメンを食す
そこで水商売風の女性からアメ女の話を聞く
テキサツ州の片田舎で身重の体で銃を片時も離すことなく
夫の帰りを待つている
夫は隣人のパーティーに行つている
彼女が心配しているのは生まれてくる子が黒ければとのこと
もう一人は華やかに賑わうワイキキではなく
反対側の海を独り呆然と見つめているアメ女
日本に帰ることも出来ず彼から逃げることも出来ないで
遠く海を見つめている
いつしか駅裏の路地はなくなり思い出も消えていった
そして今では高層ビルが建っている

山 一歩