第48回

 明治三兄弟
信州信濃の山奥にこの三兄弟は生を受け
それぞれの思いを抱いて明治を生きた
三兄弟の生家は富豪であった
家から駅までの3里の道を他人の土地を踏まずに行けたとのこと
長男は山師として金塊発掘の夢を見て財産を全て注ぎ込んでしまった
二男はリンゴ園をアメリカシアトルに開園しようと渡米した
リンゴ園が軌道に乗り花嫁を見つけに日本に戻り
シアトルへの帰路の途中船中で病死している
三男はそのような境遇の中天衣無縫豪放磊落に生きた
一斤の黒砂糖を懐に入れて夜な夜な3里の道のりを女郎屋に駆け込んでいる
満州での日々は野球に明け暮れ剛腕を振るったと自慢げに話す
信州に帰ると山奥で旅籠屋(はたごや)を夫婦で営み旅人をもてなしていた
そんなある時火災を起こす
里では義理の姉が山の上で綺麗な火が上がっていると
妹の家とも知らず眺めていたとのこと
そして夫婦は追分に逃れて
其処で細々と畑仕事をしていた
唯一の楽しみは
テレビ桟敷で高校野球と相撲観戦だった
もう一つは食道楽であり健啖家だった
七十を過ぎてもテンプラ大盛り二皿を大根おろしもつけずに
ペロリと食していた
正月は鮭ではなくブリを丸ごと一匹食していた
そのような生活が出来たのは連れ合いの人の好さにある
ばあさんが作る鯉こくは天下一品で
それを誉められるとそれだけで満足し喜んでいた
ばあさんはそれらをほとんど食べないで菜っ葉を
少し食べていただけだ
そのおかげで
じいさんは白寿まで天命を全うした

山 一歩