第68回

 コオロギ
軒下で虫が泣き出す
鈴虫でもなくキリギリスでもなく
コオロギがキィーロキィーロキィロキィロと
「何で泣いているの」と問いかける
悲しくて悲しくて寂しくて
むせび泣く
嬉し泣きじゃないよね
一人オーケストラのバイオリスト
闇夜の中暗闇を背にいつまで続く弾き語り
遥か遥か夜空の彼方で光る星に
地べたの何処かで
地べたに這いつくばって
コオロギが命の限り泣いている
キィーロキィーロキィロキィロ
キィーロキィーロキィロキィロ

山 一歩