第69回

 峠の茶屋
馬の背に荷駄をつけて馬子が
汗をふきふき上がってきた
茶屋の婆さんがそれを見て
忙しげに動き出した
腰の屈んだ婆さんが
団子とお茶を
紅い毛氈を敷きつめた
休憩所に運んできた
馬子は何時ものように
馬の手綱を欅に括り水を与え
正面に富士を見て腰を下ろす
そして煙管に火を入れ
団子とお茶で変わらぬ時を遊ぶ
足元で鶏とチャボが粟をつっいて
嬉しそうに楽しそうに
動きまわっている
鶯の谷渡りを耳にして何時しか
汗がひく
変わらぬ一日の時が過ぎる
変わらぬ一年の時が過ぎる

山 一歩